食べ物のはなし

　おにぎりはとてもおいしい。
　私はおにぎりが大好きで、どこかに散歩や遠足に行くときなど、それを持って行き、公園や野原で食べる。携帯に便利で、どこでも食べられる。しかも、つくることも簡単である。
　ごはんを炊き、そのごはんを両手で握り、丸や三角の形にする。それから塩または味噌をつけ、あるいは海苔をまく。
　これだけである。
　ある時、自分でおにぎりを作ってみようとした。妻が不在だったからだが、それが私の初めての試みでもあった。しかし、心配はしなかった。簡単だ。
　ごはんを炊き、手を水でぬらし、それからごはんを手の平に取って両手で握った。間もなく少し大きめの、丸のような、三角のようなおにぎりができた。形はよくなかったが、それは味とは関係ない。それに味噌をつけ、ついにおにぎりができあがった。
　私はおもむろにそれを手に取り、口に入れた。
　だが、おいしくなかった。ごはんの締りが悪く、ボソっとしていて、それに大きすぎて食べにくくもあった。私は思った。おにぎりを作るのは簡単だが、おいしく作るのは難しい。
　それからというもの、私は妻がつくったおにぎりを、一層感謝して食べるようになったのである。